晴のち雨のち雷、そして青空
その日は午後スルーゴルフを楽しんでいた。通称「午後スルー」である。
午後スルーとは、スタート時間が概ね 12時前後、あるいは1時頃で、前半9ホール終了しても休憩なしで後半9 ホールを実施するプレースタイルを言う。ゴルフ場の混み具合によっては、前半9ホール終了後、若干休憩がはいることもある。夏は日没が遅いためこのようなプレースタイルを採用しているゴルフ場は多数存在する。夏限定のプレースタイルである。ゴルファーにとって、早起きが不要であり、料金も割安であるため人気が高い。ただ真夏であるためそれなりの暑さ対策は必須である。
前半終了は3時ごろであった。スタート時は青空が広がっていたが、今は一面曇天である。まだ蒸し暑さが残りつつも、わずかに涼しくなってきた。「このまま涼しくなってくれればいいのにね」などと言いながらプレーを楽しんでいたのだが、13番ホール位から小雨がぱらついてきた。降ったり止んだりが断続的に続いている状態である。
16番ホールのティイングエリアに上がった時、遠くで雷の音が聞こえ出した。まだ遠いと思いながらも、内心冷や冷やである。残りわずか3ホール。切り上げてクラブハウスへ戻ろうと言う意見はまだでてこない。
16番ホールプレー中にわかに暗くなり大粒の雨が降り始めた。雷の発生頻度も上がってきたようだ。通常、雷の危険がある場合はクラブハウスから無線で避難の指示が入る。その場合は可及的速やかに近くの待避所へ避難が必要である。そろそろ、無線連絡があるのではと思いつつパッティングを終える。
カートに搭乗直後であった。無線での避難指示である。慌てて待避所へ直行する。ここからの選択肢は2つある。一つは、雷・雨が鎮静化するのまで待避場で待機し、その後プレーを再開する。もう一つは、このままプレーを切り上げ、クラブハウスへ直行する。
最近の科学の進歩はめざましく、スマホの雨雲レーダを用いて雷の経過予測の情報が手に入るのである。4人は待避所に入り、各々のスマホとじっくりと検討を開始した。各自の調査結果を持ち寄り議論した結果、全員の意見は一致した。スマホ調べでは、雷が過ぎるまでの時間は 30分程度である。日没までには余裕がある。ならば、雷が過ぎるのを待って、残り2ホールを消化するというものである。
待避所では、おやつを食べたり、本日のスコアカードを見て頭でプレーバックしていたり、タバコを吸っていたり、スマホをいじったりと各々時間を潰していた。
そこへカートの音が聞こえてきた。この雷の中、プレー再開した命知らずなパーティでもいるのだろうか。訝しく思っていると、続々と後続組みのカートが我々を追い越していく。どうやら彼らはプレーを諦めた模様である。残2ホールである我々と、残3ホール以上ある彼らでは立場が違うのであろう。あまり再開が遅れると日没になる可能性も見越して、早々とプレーを切り上げたと思われる。各組み毎で判断はそれぞれであろう。
そうこうしているうちに、雨が上がり、雷も遠のいていく。クラブハウスからの連絡で雷は去ったとのこと。我々は何事もなかったかのようにプレーを再開するのであった。
ティイングエリアで見渡すと、前方には雨上がりの澄んだ青空が広がっていた。
再開直後のティーショットの結果は言うまでもない。
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