早朝、299号でゴルフ場へ向かう
早朝の公道は空いている。その日も早起きしてゴルフ場へ向かっていたのである。
いつもゴルフ場へはスタート時間の 40分位前には到着するように家を出ている。通常ゴルフ場には1時間i以上前には到着するようにと教えられてきたが、朝打ちっぱなしで練習をしないため、40分前に到着しても十分余裕はある。プロゴルファーは2時間以上前にゴルフ場へ到着していると聞くが、素人ゴルファーにおいては、こんなものである。
その日のゴルフ場は秩父地方のゴルフ場であった。そこは高速道路のどのICからも遠い。従って高速道路は使わずに下道で向かうのである。東京・埼玉地方のゴルファーの方には馴染みであろう 299号である。この道は殆ど信号がなく、山間を川の流れに沿って走るなんとも爽快な早朝ドライブが楽しめる。
本日の各ホールのコース図を頭に浮かべながら早朝の空いている公道をステアリングを握って疾走している。前方・後方共に車は見当たらない。少し開けた窓からは森林の青い匂いが朝の新鮮な空気と相まって車内へ流れ込んでくる。なんとも静かで穏やかなドライブである。
道程を半分は超えたあたりからであろうか、コーナを曲がるたびにと前方を走る車に追いつきはじめた。朝は空いているとはいえ、数台連なって走るのはいつものことである。もしかすると前の車もゴルファーかもしれない。同じゴルフ場へ向かうのかもしれない。色々と想像しながら前の車に追従して走るのである。
徐々に速度が落ち始める。連なる車の数も増えてきた。遅い車が前を走っているのだろうか。いつしか全体が止まってしまった。何かが起きているのだろうが、カーナビに聞いても分からない。まだ状況が反映されていないのであろう。事故でも起きているのであろうか。
ここで考えるのはスタート時間に間に合うのかどうかである。残りの距離を確認し、この渋滞を抜けるまでの時間と、その後の平均速度を仮定し、頭の中ではいくつもの到着時間のシミュレーションを繰り返す。
僅かではあるが車は進んでいる。だが徐々にタイムリミットに近づいている。同伴競技者に迷惑をかけるわけにはいかない。間に合わない場合を想定し、ゴルフ場への連絡方法を確認する。予約メールに確かゴルフ場の電話番号が載っていたいはずである。
少し進んでは停止するの繰り返しは続いている。これは事故等で片側車線が封鎖されていて、交互走行が実施されているのかもしれない。迂回するルートもない一本道である。スタート時間に間に合うだろうか。時間を短縮できる工程はないだろうかと棚卸ししてみた。1つある。コンビニで朝ごはんを買う時間である。即座に朝ごはんは諦めた。
程なくして渋滞の先頭にたどり着いた。案の定事故であった。運転手か同乗者と思しき人が交通整理をしていた。他人に助けを求めている状況でもないようなので、横目で見ながら通過していく。すぐに車の流れは回復した。だがスタート時間との戦いが残っている。
前方に行きつけのコンビニが出現したが、断腸の思いで通過する。何度も残り時間を計算。なんとかスタート時間の 20分前には到着しそうである。ゴルフ場へも電話連絡した方が良いのであろうが、車を停止させて電話する時間も惜しい。
ゴルフ場に到着。猛ダッシュで受付をすませてカートへ、そして同伴競技者と挨拶を交わす。するとまだ到着していないメンバーもいるとのこと。さらに、前の組みのスタートも遅れているので、我々のスタート時間も遅れるとのこと。スタート時間に間にあった安堵が広がる一方、1時間前に到着する予定で来ていれば朝ごはんは食べれたとの後悔が沸き起こる。
しかし、ゴルフに「たられば」はないのである。
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